• テキストサイズ

【呪術廻戦】新世紀の『I LOVE YOU』

第10章 人形







――西崎美優side――




怖い……怖い……。

毛布に包まって私はただただ震える事しかできない。
ガタガタと震える身体は一向に収まる気配はなく、ただ「怖い」という感情が私を支配する。

怖い……って何が。
何に私は怖がっているの。
どうして。
私は一体何に……。

あの人……?
あの女の人を見た瞬間に、全身を襲うほどの衝撃が走った。

知らない人……だった。
なのに―――。
どこかで出会ったような、どこか懐かしい感覚。
それと同時に湧き上がる、暗く深い、恐怖と絶望。

零れる涙は頬を伝って服を濡らす。
止まらない涙は焦りと不安と恐怖を蓄積していく。

あの女の人は、悪い人じゃない。
と思う。
でもどこか似ている。
誰に……?
一体誰に似ていると言うの。
私に失った過去に、思い出せない記憶に、あの人はいたの。
それがわからないから余計に怖くて仕方がない……。

「美優?どうしたの?大丈夫?」

部屋の扉が優しくノックされる。
お母さんの、声……。

「お医者さん呼ぶか?」

お父さんの、声。

二人の心配する声が、とても嬉しくてまた涙が零れる。
血の繋がりのない両親。
記憶のない私を彼らは喜んで引き取ってくれた。
それが嬉しくて仕方がない。
二人に心配はかけられない、から。

「大丈夫。もう、平気」

部屋の扉を開けて明るく言えば、二人は少しだけ安心したような顔になった。

「ありがとう、心配してくれて」

心配してもらえることが嬉しい。
記憶がないから時々不安になる。
けれど、こうして私を愛してくれる人がいるってわかっただけで、それだけで今は十分―――。




/ 844ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp