第10章 人形
「誰かと似てた?」
「……えっと………、っ」
瞬間、西崎美優は瞳を大きくしガタガタと震え始めた。
がちがちとなる歯、零れる冷汗。
その異常とまでも言える反応に、周りの子達は西崎美優を心配し、私に敵意を向けた。
「美優、大丈夫⁉」
「酷い汗……。ちょっと!!美優に何したの⁉」
何もしてないけど、この子達からしたら私は悪者だ。
だって私を見てこんなに怯えているのだから。
この場に耐えられなくなった西崎美優は、私の横を通りすぎ走り去っていく。
その後を追う友人たち。
私は彼等の背中を見る事しかできなかった。
早急過ぎた。
もう少し時間を置くべきだった。
それにしても。
彼女は私と誰を重ねたのだろう。
もしかしてお兄ちゃんの事を知っているのだろうか。
それだけでも聞き出せばよかった。
が、まぁいい。
明日また接触しよう。
あの子達に西崎美優とはあまり関わってほしくはないが、それを言うのは酷だろう。
世の中には知らない方がいい事もある。
という大人の都合のいい言葉は嫌いだ。
それはただの偽善。
苦しいことや悲しいことに蓋をして、暗い部分だけを一方的に切り捨てるのは傲慢だ。
真実に耐えられない人もいると思うけど、それでも知らなければいけないことは知らなくてはいけない。
だから、時期が来たら私はあの子達に真実を話さなくてはいけない。