第1章 復讐
大好きだった。
優しくて強くて、少し意地悪だけど、私に向ける笑顔が、何よりも大好きだった。
兄さえいればそれでよかった。
だから信じた。
あの日の兄の言葉を。
【全部終わったら、必ず戻ってくるよ】
兄が全てを終わらせて、私の元へ戻ってくるその日を。
例え、兄の未来が処刑され死ぬ運命だったとしても。
私がこの手で兄を処刑する。
そして私も死ぬ。
そう誓ったのはもうずいぶん前のことだ。
「犯罪者の妹」という肩書は、幼かった私に重く伸し掛かかった。
何もしていないのに「犯罪者の妹」というだけで、犯罪予備軍扱い。
兄が非術師を非難する意味を理解できたのは、10歳の頃だった。
酷いいじめを受けたし、殺されそうになった時もあった。
それでも兄が戻ってくるまで死ねないから。
笑って迎えられるように、私は彼らからの仕打ちを我慢し続けた。
毎日毎日、人の目を避けるように日の光を浴びぬように生きてきた。
それでも世間体を気にした親戚たちは、私を保護施設に預けた。
その後引き取り先が見つかり名前を変えて生きれば、誰も私が「犯罪者の妹」だとは思わなかったようで、態度は今までの非ではないほどに優しいものとなった。
糞だな。
そんな言葉を吐き捨てながら私は小学校を卒業し、同時に家を出た。
両親と兄と住んでいた家に戻り、そこで静かに暮らすことを望んだ。
一人で暮らし始めてから数日しか経っていないのに、どこからそんな情報を掴んだのか、毎月生活費が兄から振り込まれたから、生活に困る事はなかった。
そう言うところも大好き。
私の事を心配してくれているんだと思って、すごく嬉しかった。
兄のしようとしていることは、正直間違っていると思う。
思っているけど、元の優しい兄にまた会えるならどうだってよかった。
私の中心は兄で回っていたのだから。