第1章 復讐
――夏油side――
窓から差し込む朝の光で目を覚ました。
寝起きの覚醒していない頭でぼんやりと虚空を見つめる。
朧げだけど随分と昔の夢を見ていたような気がする。
目を擦り、スマホの電源を入れディスプレイに表示された数字を見て寝ぼけていた頭は覚め始める。
2017年9月。
そうか。
もう10年経つのか。
寂しさが全身に押し寄せ心臓がきゅっと締め付けられる。
10年前の2007年9月。
兄は、両親を殺して私の目の前から姿を消した。
血の海に沈む両親の姿を今もまだ鮮明に思い出せる。
兄は、犯罪者となった。
非術師を抹殺することで呪術師だけの世界を作ることが目的だと知ったのはつい最近のこと。
両親が殺され、私が生き残ったのは私が術式を持っていたからだ。
一体何が兄をそうさせたのか知らない。
優しい兄がなぜ犯罪者になったのかなんて考えてもわからない。
何一つわからないまま月日だけが経ち、私は15歳となった。
両親が殺されたときは、ショックが大きくて、兄を憎んで恨んで責めた日もあった。
だけど、それでも心の底からは憎めなかった。
どうしようもない感情をどこにぶつけていいかもわからない日々だけが続いた。