第10章 人形
そして伊地知さんに電話をかけた。
「伊地知さん、聞きたいことがあるんですけど」
≪はい、なんでしょう≫
「今回の私の任務、呪霊がいるかどうかの確認でしたよね」
≪はい、そうですが……≫
「結論から言いますけど、呪霊はいませんでした」
≪そうですか。それはよかっ……≫
「ただし、呪骸はいました」
≪……え?≫
「人間の形をした呪骸です。まるで本物の生きている人間のように動いています」
≪ちょ、ちょっと待ってください!!≫
スマホの向こうから伊地知さんの慌てたような声が聞こえる。
そりゃそうだろう。
私も自分で言っていて意味がわからないもん。
≪……少し、お時間を貰えますか。確認したいことがありますので≫
「わかりました。折り返し電話をください」
そう言って私は電話を切った。
自分のこの目で見た物が嘘でなければ、あの西崎美優という少女は呪骸だ。
人間に魂を宿らせるだなんて聞いたことがない。
というか、これ。
やっちゃいけないことだろ………。
なんで私がやる任務はこうも面倒なことばかりなんだ。
頭を抱えながら、深いため息を吐いた時スマホが鳴った。
伊地知さんから折り返しの電話かと思ったら、相手は五条悟だった。