第10章 人形
「あのさ、あそこのど真ん中にいる髪の長い可愛い子いるじゃん。あの子名前なに?」
「西崎美優ですけど……」
「そうなんだ。いや、私の友達にすごい似てるからさ、姉妹かなって思って」
「美優に姉妹はいないですよ。それどころか両親もいないです」
「え……?」
生徒の言葉に私は耳を疑った。
その子曰く、彼女の両親は交通事故で亡くなっているらしく、その時のショックで西崎美優は記憶喪失になったと言う。
今は西崎家の養女として新しい生活を送っていると教えてくれた。
「初対面なのになんでそこまで教えてくれるの?」
「美優が話してもいいって言うから。別に気にする事でもないって」
「へぇ。すごいね」
こっちの心配などお構いなしに西崎美優という生徒は明るい性格らしかった。
そのために、記憶喪失のことも遠慮なしに話せるという。
良いことなのか悪いことなのか分からないけど、いい友人関係は築けてるみたいだから、いいのか。
私は生徒たちに挨拶を軽くした後、学校を後にした。