第10章 人形
次は2年の教室だが、2‐3も2‐2も空き教室だったためにスルー。
残るは2‐1なのだが。
「ここだ」
この教室から微かに感じる違和感に、私は眉を潜める。
今は授業中。
無理矢理中に入るわけにはいかない。
だが、確実にここなんだよなぁ。
学校終わりにまた来た方がいいかな。
そう思いながら、踵を返した時ちょうど授業終わりのチャイムが鳴った。
ガタガタと椅子を引く音が聴こえ生徒たちの話声が聞こえてくる。
トイレに行くために扉が開けば、生徒たちは私を見てはこそこそと何かを話し足早に遠ざかる。
まぁ、普通の反応だろうな。
半開きになった扉に近づき中を覗く。
教室は一瞬にして静まり返り、私もまた眉間に皺を寄せた。
なんか、変なのがいる。
教室のど真ん中。
友人たちと談笑している一人の少女の気配。
あれは……なんだ。
「あの、あなたは……?」
扉の前でずっと佇む私に、勇気のある生徒が話しかける。
うーん、なんてごまかそうか。
「私ここのOGなんだけどさ。久しぶりに遊びに来たんだよね。ごめんね、邪魔したかな?」
「あ、いえ……」
OG、と言えば納得したような表情になる生徒たち。
そんな簡単に人を信じちゃ駄目だぞ。
東京だとすぐに騙されんぞ。
嘘をついておいてなんだが、警戒心が少し薄れたのならちょうどいい。
あの子の事を聞いてみよう。