第10章 人形
許可証を首から下げ、私は校内へと足を踏み入れる。
正直、変な感じはしない。
呪霊特有の呪力が感じられない。
が、なにか違和感があるのも確かだ。
なんだろう、これ。
「校内に入ることは可能ですか」
「はい。これ、許可証です」
補助監督の人から許可証を貰い、首から下げる。
そして訪問者用の玄関へと行けば、担当の人が校内を案内してくれると言う。
「今は授業中ですが、ご案内いたします」
「ありがとうございます」
頭を軽く下げ、まずは一階の玄関から。
が、ここは何もない。
次は体育館。
が、ここからも何も感じない。
これだと時間が食うな。
好きに歩かせてくれないかな。
「あの、好きに見て回ってもいいですか」
「え、あ、はい……」
「すみません。後は一人で大丈夫です」
どうしても一般人がいるとやりづらい。
案内してくれたのに申し訳ないが、ここからは私一人で行動することにした。
というのも、変な感じがするのは2階部分から。
迷うことなく階段を上り、違和感のするところへと歩を進める。
階段をあがってすぐのところに教室があった。
そこは空き教室らしく「3‐3」と書かれたプレートがぶら下がっていた。
以前まではこの教室も使っていたのか。
少子化によって生徒の人数も減って、という所だろう。
私は廊下をまっすぐに進んでいく。
3‐2の空き教室を通り過ぎ、3‐1を通り過ぎる。
生徒が見えないが、指定のカバンや乱れた机の配置などを見る限り、今は移動教室なのかもしれない。