第9章 領域
「昨晩、未登録の特級呪霊2体に襲われた」
「!それは災難じゃったの」
「勘違いすんなよ。僕にとっては町でアンケート取らされた位のハプニングさ」
ハプニングどころか悠仁とにとってはいい授業になったと思うし。
特に悠仁は。
領域展開なんて実際に目にしないと分からないこともあるからね。
「その呪霊達は意思疎通が図れたし、同等級の仲間もまだいるだろう。敵さんだけじゃない。秤に乙骨、そっちの東堂。生徒のレベルも近年急激に上がってる。去年の夏油傑の一件。そして現れた夏油傑の妹と宿儺の器」
「何が言いたい」
「分かんないか」
ククッと喉奥で笑う。
ここまで言っても何も分からないなら、随分と長い間生温い湯に浸かっていたようだ。
「アンタらがしょーもない地位や伝統のために塞き止めていた力の波が、もうどうしようもなく大きくなって押し寄せてんだよ。これからの世代は"特級"なんて物差しじゃ測れない」
特には自分の力をまだわかりきっていない。
それを理解した時は、彼女の呪術師としての力は僕と同等だろう。
「牙を剥くのが僕だけだと思ってんなら痛い目見るよ、おじいちゃん!!」
「少しお喋りが過ぎるの」
目を見開き睨むジジイ。
自分のこととなればそうやって保身になる当たり、虫唾が走る。
「お―怖!!言いたいこと言ったから退散しよーっと。あ、夜蛾学長は2時間位でくるよー」
「2時間⁉」
驚く女子生徒の声を背中に僕は部屋を後にした。