第9章 領域
その後。
私たちは伏黒たちと合流するために家入硝子の所へと行く。
伏黒はやっぱり怪我を負ったらしい。
東堂相手に怪我だけで済んだのは幸運だと禪院真希が言っていたけど、化け物じゃねえか。
こっわ。
家入硝子の所へ行く間、釘崎は禪院真希に先ほどの会話で気になった事を聞いていた。
禪院真希はかけていた眼鏡を外した。
女のかけている眼鏡は特殊な呪力が篭められているらしく、かけていれば呪いは見えるが、なければ見えない。
そして禪院真希は「呪具」を扱っている。
初めから呪いが込められている代物。
私たちみたいに自分の呪力を流してどうこうする術を禪院真希は持ち合わせていない。
そんな奴がなんで呪術師をやっているのか。
普通に考えれば、呪術師をやろうとは思うはずがないだろうに。
それでも女は呪術師になった。
理由は簡単だった。
「嫌がらせだよ。見下されてた私が大物術師になってみろ。家の連中どんな面すっかな」
にやりと笑う顔は、ぜんまいちゃんとやっぱり似ていたけど。
それでもこいつの方が百倍もいい女だと思わされるのはなぜだろうか。
いたずらっ子の様な笑みにどこか安心感を覚えた。
「私は真希さん尊敬してますよっ」
「あっそ」
「私はしてない」
「生意気だな」
あははと笑う釘崎の声につられて、禪院真希も笑った。
私はそんな二人を見て少しだけ口元を緩めた。
家入硝子の所に行くと、頭に包帯を巻いた伏黒がいて。
「オマエいつも頭怪我してんな。バカになりそう」と言ったら「男の子は少し馬鹿なくらいがかわいいもんだ」とパンダが言って、何故だか変に納得してしまった。