第9章 領域
後ろから釘崎をホールドし、手にした銃を私に突きつける。
「あーあ、伏黒君かわいそっ。二級術師として入学した天才も一級の東堂先輩相手じゃただの一年生だもん。後で慰めてあげよーっと」
「安心しろ。慰める役は私と釘崎で十分だ。お前は家に帰って布団の中でぐっすり寝ろ」
「そうそう。ちゃんと睡眠取った方がいいわよ。寝不足か?毛穴開いてんぞ」
「口の利き方―――教えてあげる」
私に突きつけていた銃は釘崎の脇腹へと当てられた。
下手に動けば釘崎が打たれる。
それに伏黒のことも気になる。
さぁ、どうする。
とりあえず、あの銃をどうにかしねえとな。
私は手に持っていたエナジードリンクを上へと放り投げる。
これに引っかかる程この女は馬鹿じゃない。
でも、それでいい。
私は地面を蹴って、思い切りそれを蹴り飛ばす。
キャップの外れたそれは釘崎と禪院真依への頭上へと零れる。
「きゃっ」
「はい、隙あり」
液体を頭から被れば、人間は必ず目を瞑る。
0.1秒でも瞳を閉じさえすれば、釘崎をその腕から引き剥がすことなど容易い。
「喧嘩を売る相手は選べよ、禪院真依。略して"ぜんまい"ちゃん」
「……っ!!」
形勢逆転、と言ったところか。
その時、私の目の端に禪院真希の姿が映った。
「ウチのパシリ共に何してんだよ、真依」
「あら。落ちこぼれすぎて気づかなかったわ、真希」
姉妹喧嘩が始まりそうな勢い。
早くこの場から退散したいなぁ。
釘崎に怪我は見当たらない。
よかった、ぜんまいちゃんの術式がわからないから攻撃を受けて重症とかになったら困るし。