第9章 領域
「嫌だなぁ、伏黒君。それじゃあ真希と区別がつかないわ。真依って呼んで」
「コイツらが、乙骨と三年の代打……ね」
なんだなんだ、こいつら。
ピリッとした緊張が走っているのがわかる。
肌がひりついている。
「アナタ達が心配で学長に付いて来ちゃった。同級生が死んだんでしょう?辛かった?それともそうでもなかった?」
この女、一体何が言いてえんだ。
私は舌打ちをしながら女を睨む。
「……何が言いたいんですか?」
「いいのよ。言いづらいことってあるわよね。代わりに言ってあげる。"器"なんて聞こえはいいけど、要は半分呪いの化け物でしょ」
禪院真依とか抜かした女は顎に手を乗せて、憎たらしい笑みをその顔面に張り付ける。
「そんな穢らわしい人外が、隣で不躾に"呪術師"を名乗って虫唾が走っていたのよね?死んでせいせいしたんじゃない?」
この女、なにふざけたことを言ってんだ。
頭ン中エレクトリカルパレードでも開催されてんのか。
「おい、禪院真依とか言ったなオマエ」
「あら、あなた犯罪者の妹じゃない。あなたみたいな犯罪者予備軍も"呪術師"を名乗っているの?東京校も落ちたわね」
「……………殺す」
人の地雷をばかすか踏みやがる人間が私はこの世の中で一番嫌いだ。
特にこの禪院真依は、とてつもなく人の心の中を乱しやがる。
「真依。どうでもいい話を広げるな。俺はただコイツらが乙骨の代わり足りうるのか、それが知りたい」
煽るだけ煽って満足した女はにんまりと口元を歪めている。
一発ぶん殴らねえと気が済まねえ。
特に、兄の事を侮辱したことと虎杖をバカにしやがった事。
これだけは許せねえ。