第9章 領域
――夏油side――
次の日。
私は大欠伸をしながら、伏黒と釘崎と共にパシられていた。
釘崎は禪院真希を慕っているみたいで、禪院真希から頼み事を言われればなんでもいうことを聞いている。
つまり舎弟である。
ガコン、と音を立てて自販機から飲み物が落ちてくる。
「自販機もうちょい増やしてくんないかしら」
「無理だろ。入れる業者も限られてるしな」
「ふぁ~。ねっむ」
「また夜更かししたの、あんた?お肌に悪いわよ」
「ん~、課外授業してたら寝るのが遅くなった」
「課外授業?」
しょぼしょぼする目をこすりながら、私も自販機にお金を入れた。
エナジードリンクでも飲んで目を覚ますか。
自販機でエナジードリンクを買い、キャップを開けて喉へと降下する。
ぷはっと息を吐いて、気が付いた。
伏黒と釘崎の視線が同じ方向に向いていることに。
私も視線をそちらへと移せば、そこには男と女が立ちふさがる敵のごとく立っていた。
筋肉質の巨体、ドレッドヘア、左頬から額にかけて大きな傷跡のある強面の男と。
もう一人はショートカットヘアでどこか禪院真希と同じ雰囲気がする女が私たちを見ている。
「なんでコッチいるんですか、禪院先輩」
「あっ、やっぱり?雰囲気近いわよね」
伏黒の言葉に私も釘崎も納得した。
成程、姉妹なのか。
先輩、ということは禪院真希のお姉さんなのか。
まぁどっちが姉とかどうでもいいわ。