第9章 領域
――夏油傑side――
漏瑚が五条悟と接触した。
が、完全敗北を目にし私はとあるマンションの一室へと足を運ぶ。
マンションの扉を開ければそこは南国のビーチリゾートのような空間が広がっていた。
これは陀艮の生得領域か。
「随分と穏やかな領域だね」
「漏瑚はどうした、夏油」
ビーチパラソルの下、本を読んでくつろいでいる呪霊が一人。
身体中、ツギハギのある特級呪霊―――真人が、本を閉じてうっすらと笑みを浮かべている。
「瀕死。花御が助けに入ったから多分大丈夫じゃないかな」
「無責任だな。君が焚きつけたんだろ」
「とんでもない。私は止めたんだよ」
その時、扉の開く音がした。
噂をすればなんとやらだ。
「漏瑚、花御。無事で何より」
漏瑚は首だけの姿で花御に抱えられている。
これを見て無事だと言える当たり、真人は性格が悪いね。
「どこをどう見て言っている!!」
歯を食いしばり悔しそうな表情の漏瑚。
だが、首だけでも回収できてよかったじゃないか。
下手したら君は死んでいたんだから。
「それで済んだだけマシだろ」
厭味ったらしくそう言うと漏瑚は私を睨む。
舌をだしておどけてみせるが、本当のことだろ。