第2章 恥辱
「"開錠"!!」
地面に私は鍵を撃ち込み、右手を内側に回した。
すると地面はひび割れ、五条悟に向かって亀裂を走らせる。
私は、朝から五条悟と勝負をしていた。
昨日はたっぷり寝たし、体力も万全。
それに昨日と違ってあいつは無下限を解いている。
当たらない、なんてことはない。
「昨日も思ったけど、おもしろいね。その術式」
「喋ってる余裕あんのかよっ!!」
足元が崩れる前に五条悟は安全な場所へと移る。
けど、地面は囮だ。
私は崩れる瓦礫たちを死角にし、五条悟の懐へを潜り込む。
五条悟に鍵ごと投げてぶっさすという手は通用しない。
というかこれが通用するのは3級、4級とかの雑魚だけだ。
だから接近戦で直でぶち込む。
数分後。
地面に倒れているのは私だった。
両ひざ両手をついて息を乱す。
どんなに攻撃をしても簡単にガードされるし、体力のなくなった私の鳩尾を思いっきり殴ってくるし。
息が止まって死んだかと思った。
これでまだ手加減をしていると言うのだから、本当にムカつく。
こっちの全力はお前にとってはお遊びなのかよ。
「くそっ!!!!」
「今日はもう終わり~。僕、任務に行かなきゃ」
「絶対明日殺してやる!!!」
「楽しみにしてるね~」
ふざけやがって。
遠く離れる五条の背中を睨みつける。
だんだんそれが歪んでいって、地面を濡らした。
悔しくて涙が溢れる。
それを乱暴に拭って、私は部屋へと戻った。
明日の作戦を練るために。
次の日も。その次の日も。そのまた次の日も。
私は五条悟に傷一つつけられないまま黒星を重ねた。
私の身体は生傷が絶えることはなく、身も心も疲弊しきっていた。