第9章 領域
首を傾げる虎杖にため息を吐く私。
そんな私を見て虎杖は口を開いた。
「誰にでもってことはない、つもりだけど」
「ん?」
今度は私が首を傾げる番だった。
「誰彼構わず思わせぶりな事言わないよ、俺」
「それって、どういう……」
真っすぐに私を見つめる虎杖。
その瞳はどこまでも澄んでいて、まっすぐで、真剣だった。
「ごちそうさま!!早く映画観ようぜ!!」
だが、次の瞬間には虎杖は慌てたようにDVDを漁り始めた。
先ほどまでの張りつめたような雰囲気はどこにもない。
どこにも無いんだけど。
ドクン、ドクン、と私の心臓は大きく脈打つ。
伏黒や釘崎が言っていただけで本当は違うんだじゃないかって、勘違いなんじゃないかって思っていたけど。
今の虎杖の言葉は、下手したらそうなんじゃないかって。
私の事を好きなんじゃないかって、そう思ってしまう。
いや、まだわかんないだろう。
咄嗟にごまかされたし。
直接告白されてないし。
勘違いすんじゃねえぞ的な、俺をタラシみたいに言うなよ的な、そういう風にだって捉える事ができる。
うん、そうでしょ、絶対。
じゃないとおかしいもん。
私みたいな人間のどこを好きになるのか、見当もつかない。