第9章 領域
二人きりの部屋。
DVDプレイヤーからディスクを取り出し、次何を見ようかと虎杖と相談する。
と、その前に。
「腹減らない?」
「確かに」
ぐぅ、と私の腹の虫が鳴いたのをきっかけに一度ブレイクタイムを挟んだ。
何が食いたいかと虎杖に尋ねればなんでもいいと答える。
「そういうのが一番面倒なんだけど」
「じゃあ肉じゃが」
ここ最近、夜飯は虎杖と一緒に食べている。
ほぼ私が作っているがたまに虎杖も作って映画を観るのが日課となった。
新婚夫婦みたいだね、と言った虎杖の頭をはたいたのはつい昨日の事である。
肉じゃがを作り、私はそれをテーブルへと運ぶ。
目を輝かせる虎杖の口元からはよだれが垂れていた。
汚ねえな。
「夏油の作った飯まじでうまいんだけど」
「慣れてるからね。中学からずっと作ってたし」
「いいお嫁さんなれんじゃん」
「……それ、私以外の奴に言わないほうがいいぞ」
「え?」
「お前ってさ、そういうこと誰にでも言ってんのか?」
「そういうことって?」
あ、こいつ天然のタラシだ。
こういうところ、質が悪いよな。
いい奴なんだけど。
虎杖のこういうところに惚れた女、絶対いるだろ。
だってこいつ無自覚天然タラシ野郎だもん。