第8章 修行
「一緒に食べよ」
「え?」
「みんなで食べると楽しいんだよ、知ってた?」
虎杖は不思議そうな顔をした後、白い歯を見せて笑った。
こいつがちゃんと復学したら、またみんなと飯でも食べたいな。
今度は鍋とかでもいいかも。
釘崎がカルパッチョ食べたいって言ってたから練習しておこう。
「うまっ」
「だろ」
当り前だけど、昼に比べれば騒がしさはない。
だけど、くだらない話をしたり虎杖の映画の話を聞いたり、釘崎や伏黒の話をしたりする、この時間はとても楽しいと感じた。
飯を食べ終わって、映画を観て。
帰ろうとした私の腕を虎杖が掴む。
「なに?」
「あのさ、明日も……その、夜飯、作ってきてくんね?」
「いいけど。虎杖も料理できるよね」
「いや、だからその……、夏油の手料理が食べたいなぁ、なんて」
頬を赤く染め上げる虎杖に、昼間の事を思い出した。
虎杖が私の事を好きであると。
何で今そのこと思い出した。
私まで赤くなるだろうが。
「別に、いいけど……」
「まじ?ありがとう!!」
満面の笑みの虎杖。
見える、私には見える。
尻尾が生えた虎杖が、それをめちゃくちゃ振り回しているのが。
犬か、犬だ、犬だわ。
「じゃあ、また明日」
そう言って、私は地下室を後にした。
バクバクと心臓が高鳴っているけど、この正体がなんなのかわからずに、知らないふりをして私はベッドに横になったのだった。