第8章 修行
「ツナ」
そんなことを考えなら煮込んでいると、狗巻棘に肩を叩かれた。
どうやら味見をしてほしいとのこと。
そんなの自分好みでいいだろと思ったけど、手を引かれた。
思ったより手がでかい。
骨ばってるし。
マジでこいつちゃんと男なんだな。
小皿に少しだけスープを入れて、フーフーと息を吹きかけ熱を冷ます。
いや、子供じゃねえんだからというツッコミはしなかった。
差し出された小皿を受け取り、口に含んだ。
「高菜?」
「うん、ちょうどいい」
「しゃけ!」
嬉しそうに笑う狗巻棘。
クッキングヒーターを片付けてもらっている間に私は最後の仕上げに入る。
ちょうどそのときくらいに、他の連中もやってきた。
「いいにおーい!!パエリアじゃん!!夏油すごくない?」
「うるさいうるさい、いいから座ってろ」
「飲み物持ってきたぜ。コップある?」
「人数分無いからマグカップも使え」
「何か手伝う事あるか?」
「お椀だせ。スープあるから分けろ」
「あれ、棘早いな~」
「しゃけ」
一気に人口が増えたしうるさくなる部屋。
だけど悪い気はしなかった。
コンロの火を消して、私は狗巻棘を呼んだ。
そして味見として一口パエリアを食べさせる。
「どうよ」
「しゃけしゃけ」
「じゃあ、このまま持ってく」
私はフライパンごとテーブルに持って行く。
それとスプーンと箸と小皿。
テーブルに乗せられたパエリアと中華スープ。
品物は少ないけど、腹は膨れるだろう。
「めっちゃうまそう!!」
釘崎、よだれ垂れてんぞ汚えな。
手を合わせて、私たちはみんなで昼飯を食った。