第8章 修行
「他に何が怖いんだろう。……ゴキブリ」
「怖くない」
「ちがうか。じゃあ、無難に雷」
「怖くないし」
「怖いのか」
まるで尋問されているような気分だ。
というか釘崎すげえノリノリなんだけど。
「意外と怖いもの多いのねぇ」
「雷に、注射に、薬、ムカデ、真希先輩……。なんで真希先輩?」
「ゴリラだから」
「おい、!!聞こえてんぞ!!」
私の怖いもの言い当てるゲームが繰り広げられている中、いきなり教室の扉が開いた。
今名前のあがった女が不敵な笑みを浮かべている。
後ろにはパンダと狗巻棘もいる。
ああ、もうそんな時間か。
こいつらとまた今日も体術の訓練だ。
「私が怖いだって?」
「怖くねえし。苦手なだけだし」
「なんでだよ。こんなに優しく指導してんだろうが」
「どこがだ。最初の時私の頭かち割ったくせに」
「かち割ってねえ。怪我させただけだ」
「同じことだろ。このゴリラ女が」
「よし、今日はいつもよりスパルタで行くぞ」
そう言うと、禪院真希はものすごい力の強さで私の腕を引っ張り外へと連れ出す。
こういうところが苦手なんだよ‼
だけど禪院真希との体術は正直、私の為のものであるから感謝はしている。
天与呪縛、とは違う。
呪力をほとんど持たない代わりに人間離れした身体能力を持っている禪院真希の力は二級術師以上の実力。
「へぇ、前より恐怖はねえみたいだな。だけど、まだ甘い!!」
私の攻撃を避けてばかりだった女は、私の上段蹴りを受け止め、そして足首を掴み勢いよく遠くへ飛ばした。
飛ばされた方向には伏黒と釘崎、パンダと狗巻棘がいて思い切り突っ込んだ。
「いってぇ……」
「大丈夫か、」
パンダに受け止められ、私は地面に下ろされる。