第8章 修行
人の怪我とかには敏感に反応する癖に、自分の怪我には鈍感なところがムカつく。
お前も傷ついてんだろって言っても、ヘラヘラして「そんなことないよ」って嘘つくし。
その作り笑顔やめろ、ムカつく。
寂しがりな癖に、いつも一人でいてそれが正しいって思っているところがムカつく。
天邪鬼もいい加減にしろ、いい大人だろうが。
泣き方知らねえのかって突っ込みたくなるほど泣き方が下手くそなのもムカつく。
こんな寒くて広くて暗い部屋で静かに泣いてんじゃねえよ。
泣けばいいだろうが、みっともなく
そしたら家入硝子とか夜蛾がお前をからかいながらもお前を慰めてくれんだろうが。
それくらいは仲がいいんだろ、お前らは。
ムカつく。
この男の全部が。
勝手に人の心の中にズカズカ入り込んでくるくせに、自分の中には絶対入れさせない。
なんなんだよ、ムカつく。
お前が弱いって事、私はもう知ってる。
知ってんだから、少しくらい私の前では泣けよ。
お兄ちゃんのことでたくさん泣けばいいじゃねえか。
「大嫌いだ」
大嫌いだ、お前の事なんか。
こんな形でしか自分を慰める術を知らないお前なんか、大嫌い。
私は寝室を後にしてソファに横になった。
寝れる気がしなくて、ただ静寂の中でただぼうっとして、そのまま朝を迎えた。