第8章 修行
怖い、のか。
傑と同じ瞳の色をしたあの目に見つめられると、どうしても脳裏に浮かぶのはあの時のこと。
傑が裏切った時の事を思い出してしまう。
あんな思いをするのは二度とごめんだ。
そのためだったら手段を択ばずにアイツを繋ぎとめる方法を考えた。
その結果、セックスなんて方法も取ってしまったわけだけど。
傑。
オマエ、とんでもねえもんを置いていったな。
を守るために高専にその存在を言わなかったのかと考えたこともあったけど、もしかしてこうなる事も見越していたわけじゃないだろうな。
僕もアイツも、オマエに振り回されてんだけど。
生きてる人間が死んだ人間に勝てるわけがないんだよ。
ずっと存在し続けるから。
オマエがいなくなった時絶望した。
この世界で生きていけるイメージが全く湧かなかった。
それでも俺はオマエを精神の縁にしていた。
たぶんもそうだろう。
わかるか、傑。
俺とは今も昔もオマエを中心に回ってんだよ。
「馬鹿野郎」
もうこの世にいない親友に悪態を吐いた。
もしここにいたら柔らかい笑みを浮かべていただろう。
オマエがアイツの中にいる限り、僕は僕の中のこの理解しがたい感情を抱き続けるだろう。
胸の内に宿るもやもやの正体が一体なんなのか。
何でこんなにも乱されなければいけないのか。
それがわからないから更にイラつく。
大きく息を吐いてゆっくりと目を閉じる。
そうすれば仕事の疲れやストレス、先ほどのセックスの疲労が襲ってきて、すぐに深い眠りへと落ちていった。