第8章 修行
次の日。
私は朝っぱらから禪院真希たちと体術訓練をしていた。
体術に関しては伏黒や釘崎と比べればましな方だろう。
これでもほぼ毎日五条悟に投げられ、蹴飛ばされ、ボコボコにされているのだから。
「!!すぐに諦めんじゃねえ!!ギリギリまで見極めろ!!」
「っるせえな!!わかってんだよ‼」
今私は禪院真希と戦っている。
こいつ4級術師って言ってたけど、嘘だろ。
フィジカルが強すぎる。
長い棒を振り回してるから間合いを詰めればいいと思ったけど、それ以前の問題だ。
間合いを詰めるどころか、私の間合いを詰められている。
禪院真希の攻撃を避けることで精いっぱいだ。
「ぐっ!!」
「はーい、また私の勝ち~」
左腕を思い切り棒で殴られた。
くそ痛え……。
左手を抑える私に、禪院真紀は深いため息を吐いた。
「お前さ、なにに怖がってんだ?」
「……怖がる?誰が?」
「とぼけんな。自分でもわかってんだろ」
「…………」
「悟と勝負のし過ぎだな。あいつの強さに身体が恐怖覚えてら。それ克服しない限りお前、弱いままだぞ」
「わかってるよ……」
このままだと私はきっと任務で死んでしまうだろう。
そういう世界だ。
恐怖に打ち勝てずに挫折する術師など腐る程いる事を知っているんだ、私は。
そのうちの一人になんかなりたくないけど。
どうしても恐怖が勝る。
怖いって。
あの特級仮想怨霊に会った時と似たような感覚が私を襲う。
そして五条悟に勝てずに心が諦念へと導かれていく感覚がまさに今あるんだ。
どうしたらいいのかわからない。
どうにかしなければとわかってる。
「強くなんだろ。恐怖を勇気に変えろ」
「教師気取りか?」
「いいや。師匠気取りだ」
禪院真紀はにっと白い歯を見せて笑った。