第7章 じゅじゅさんぽ【Vol.2】
高専のグラウンドでは、同級生の釘崎がパンダに投げ飛ばされている最中だった。
「おっせぇよ恵。何してた」
「なんでもいいでしょ」
自分が目指す呪術師としての信条が少し揺らぐ伏黒は参考程度に真希に尋ねた。
呪術師としてどんな人たちを助けたいのか、と。
「あ?別に私のおかげで誰が助かろうと知ったこっちゃねぇよ」
「聞かなきゃよかった」
真面目に聞いた俺が馬鹿みてえじゃねえか。
はぁ、と伏黒はため息を吐いた。
「伏黒ォ!!!」
その時、パンダに足首を掴まれぐるぐると回転する釘崎は何もしていない伏黒に選手交代を告げる。
「可愛いジャージを買いに行かせろ!!」
釘崎は他の生徒と違い、制服で体術訓練を行っていた。
制服では確かに運動はきついものがある。
ぎゃあぎゃあ騒ぐ釘崎は地面に投げ飛ばされ、地面に転がった。
近接攻撃に弱い釘崎と伏黒の特別訓練は、投げ飛ばされることに慣れる事。
そして、それに耐える事。
今はそれを身につけろ、との事らしい。
「まずは私から1本取れ。話はそれからだ」
真希の言葉に、伏黒は一度目を伏せたあと静かに前を見据えた。
強くなるって決めた。
その為なら何でもやるとも。
正直、真希の強さは4級レベルではない。
運動神経に関しては、伏黒以上である。
そんな彼女から1本取るとなれば、骨の折れる訓練であることは言わずもがなだ。
それでもやるしかないのだ。
強くなるために。
「お願いします」
只がむしゃらに、自分にできることを、やるべきことを、果たすだけだ。