第7章 じゅじゅさんぽ【Vol.2】
――伏黒恵side――
少年院で宿儺に受けた傷を治療した後、俺は釘崎と高専の中へ続く石階段に腰を掛けていた。
夏油は虎杖の遺体が安置されている場所へ行っている。
思いつめた表情をしていた夏油のことが気になってついていこうと思ったが、俺には勇気がなかった。
クラスメイトの死をこの目でもう一度見る勇気が。
「長生きしろよって……。自分が死んでりゃ世話ないわよ」
頬杖をついた釘崎がため息と共にぽつりと零す。
「……アンタ、仲間が死ぬのは初めて?」
「タメは初めてだ」
「ふーん、その割には平気そうね」
「……オマエもな」
「当然でしょ。会って2週間やそこらよ。そんな男が死んで泣き喚くほど、チョロい女じゃないのよ」
そういう釘崎だったが、唇を噛みしめて泣くのを我慢していることに気づいていた。
が、言わなかった。
釘先の強がりだとわかっていたし、慰めの言葉など必要ないと思ったからだ。
「夏油のやつ、大丈夫かしら」
「大丈夫、とは言えないだろうな」
「自分のせいだって思ってそう」
責任感の強いやつだから、確実にそう思っているだろう。
そんなことないのに。
でも、どんな慰めも夏油には届かないこともわかっていた。
だからこそ、釘崎もこうして心配するしかできない。
釘崎も俺も夏油も、お互いになんて声をかければ分からない。
わからないから、当たり障りのない、話題しか、口に出せない。
「………暑いな」
「そうね……。夏服はまだかしら」
五月蠅いほどに鳴き喚くセミの声が、本格的に夏を知らせる。
行き場のない感情を抱えた俺たちはただ、その声に身をゆだねるだけ。