第6章 じゅじゅさんぽ【Vol.1】
その時、私の背後から聞き覚えのある声が響いた。
振り向けば、安心したような表情でこっちへ向かってくる狗巻棘の姿。
やっべ、すっかり任務中だって忘れてた。
「高菜~」
「悪かったって。人助けしてたんだよ」
「すじこ?」
「自殺志願者。でも自殺やめるって。今日ラピュタだから」
「ツナツナ~」
「……なんで会話通じてんの?」
「細かいことは気にすんな。ゆってぃもそう言ってただろ」
「しゃけ!!」
「はぁ……」
こうして呪霊狩りは無事に終わったわけだけど。
高専に戻ったらサボっていたことが禪院真希にばれて、めちゃくちゃ怒鳴られた。
その様子を助ける訳でもなく、パンダと狗巻棘は笑って見ていて、可愛い後輩がボコられているのに酷い連中だ。
お兄ちゃんのいない世界では笑えないと思っていたけど。
私は今こうして笑っている。
お兄ちゃんのいない世界で生きていけないと思っていたけど。
私はこうして生きている。
時々、ちくりと胸が痛むときもあるけど。
そんなの大した傷じゃない。
あいつが、猫の恩返しを見るまで死ねないように。
私は、五条悟を殺すまでは死ねない。
それまでは絶対生きてやるし、殺してやる。
そういう生き甲斐ってやつを見つければ、案外人は簡単に"生きる"という行為はできる。
寂しんぼの無様でみっともない生き様。
目的を果たすまで、私はそう言う風に生きていく。