第1章 復讐
僕はにこりと笑って、に言ってやった。
「でもね、僕はこう見えてとても優しい性格をしていてね。僕を殺そうとしてたみたいだけど、見ての通り僕は傷一つつけられていない。つまり君はまだ何もしていない。何もしていない子供を死刑にするなんて、僕の良心が痛んじゃう」
「どの口が言ってんだ。兄を殺したくせに。親友だったんだろうが!!」
親友。
その言葉に、張り付けていた笑みが少しだけ震えた。
だけど、それをこの子に悟られてはいけない。
「そう。親友だったよ。たった一人のね。でも、仕方がない事も世の中にはある」
正論嫌いのはずなのに。
僕は今この子に正論という名の暴力を投げつけた。
すると、はひゅっと息を呑んで、そして両の目から大量の涙を零し始める。
それは頬を伝って、ボロボロと地面に落ちては大きなシミを作る。
震える声から紡ぎだされた言葉は、紛うことない彼女の本音。
「仕方がねえから殺すのかよ‼だったらお前らだって人殺しじゃねえか!!お兄ちゃんと何が違うんだよ‼正義の味方気取りかよ!!たった一人の家族だったのに!!ずっと待ってたのに……!!ずっと待ち続けた私の気持ちは見ないふりなのかよ。ずっと、ずっと待ってたのに……。また戻ってくるって言うから、それだけを信じて。苦しかったけど、辛かったけど、また一緒に過ごせるから。それだけが私の生き甲斐だったのに!!……お兄ちゃんが、死刑になるって、なったら。私が殺すって約束、してたのに……。お兄ちゃんを殺して、私も死ぬって。そう言う約束、してたのにっ……!!」