第5章 特級
「夢があるんだ」
いつになく真面目なトーンに、私は押し黙る。
こいつに夢なんてあるのかと思ってしまったが、五条悟の抱く夢とはいったいどういうものなのか、興味が湧いた。
「夢……ですか」
「そっ。悠仁やのことでもわかる通り、上層部は呪術界の魔窟。保身馬鹿、世襲馬鹿、高慢馬鹿、ただの馬鹿、腐ったミカンのバーゲンセール」
すげえ言われよう。
でも、なんとなくわかる。
「そんな呪術界をリセットする」
それが五条悟の夢……。
五条悟にとっては上の連中など皆殺しにするのは簡単。
だけどそれだと首がすげ替わるだけで変革は起きない。
それにそんなやり方では誰もついては来ない。
だから五条悟は教育を選んだ。
そう、言った。
「強く聡い仲間を育てることを」
「それで自分の任務を私たちに投げてんのか」
「そ。愛のムチ」
「サボりたいだけだろ」
「違いますぅ。実際みんな優秀だよ。特に3年の秤、2年の乙骨。彼らは僕に並ぶ術師になる。もちろん、、お前もね」
そんなわけないだろ。
現に私は、友達を捨てたんだぞ。
こんな奴が優秀な呪術師だと。
笑わせんな。
きっと、その中に虎杖もいたんだろうな。
握った拳がそれを物語っている。
「ちょっと君達。もう始めるけど。そこで見てるつもりか?」
マスクと手袋をした家入硝子がこちらを向いた時。
ベッドの上で死んでいたはずの虎杖が、ゆっくりと起き上がった。
まるで朝日を浴びて目を覚ましたかのように。
私も五条悟も伊地知さんも家入硝子も、この場にいた全員が驚きを隠せない。