第5章 特級
――夏油side――
「僕はさ、性格が悪いんだよね」
泣いて泣いて泣きまくって。
少し落ち着きを取り戻したころ。
五条悟は唐突にそう言ってきた。
男の膝の上で抱きしめられ続けられていることに羞恥を覚えた私は抜け出そうとしたが、ぎゅっと力強く拘束されたことにより、抜け出すのを断念。
だから抱きしめられたまま、男の言葉を聞いていたのだが。
多分ここにいる全員が同じことを思ったと思う。
知ってる、と。
「知ってます」
「伊地知さん……」
「伊地知後でマジビンタ」
この人のこういうところは嫌いじゃないけど、生きづらい性格してるなとも思う。
「教師なんて柄じゃない。そんな僕がなんで高専で教鞭をとってるか、聞いて」
「めんどくさ……。勝手に自分語りすればいいじゃん」
「なんでですかって聞いてよ」
「くそだる……」
「な、なんでですか……?」
いつまでも終わらないと悟ったのか、伊地知さんが代弁してくれた。
何ていい人。
そのうち胃に穴空きそう。