第5章 特級
――虎杖悠仁side――
『許可なく見上げるな。不愉快だ、小僧』
見慣れない異様な空間は薄暗く、足元には水が張っている。
そして目の前には山積みになった動物の頭蓋骨。
その上に優雅に足を組んで俺を見下ろす宿儺の姿が。
許可なく見上げるな、だと?
「なら降りてこい。見下してやっからよ」
こめかみに青筋を立て宿儺を睨み上げる。
『随分と殺気立っているな』
「当たり前だ。こちとらオマエに殺されてんだぞ」
『腕を治した恩を忘れるとはな』
「その後心臓取っちゃったでしょーが!!」
恩を仇で返すなと言わんばかりに大きなため息を吐く宿儺に、俺は苛立ちを捨てきれない。
俺を見る宿儺の目は呆れと哀れみが混じっているようにも思えて更にムカつく。
「死んでまでテメェと一緒なのは納得いかねぇけど。丁度いいや」
俺は自分の前に遭った頭蓋骨を一つ手に取った。
「泣かす」
そう言って思い切り宿儺に向かって投げる。
プロ野球選手も驚きのそのスピードはまっすぐにアイツに向かって行く。
が、いとも簡単に頭蓋骨の山よりも高い場所へと逃げられる。
だが避けられたからなんだ。
追いかけて直接ぶん殴ればいい。
「歯ぁ食いしばれ」
『必要ない』
振り上げた拳は元々宿儺を狙ってなんかいない。
初めから足元しか狙ってねえんだよ‼