第5章 特級
思い切り殴れば、宿儺はバランスを崩したのか体制が傾く。
その隙を狙い、俺は姿勢を低くしながら宿儺の足元へ移動し、その勢いを利用して強烈な蹴りを放った。
所謂卍蹴り。
とった!!
俺はそう心の中で叫んだ。
が、当たった感触がない。
「アレ?」
確実に当たったと思ったし当たると思っていたんだけど。
俺の卍蹴りは見事に空ぶった。
「オマエ"は"つまらんな」
小馬鹿にするように息を吐いて言葉を投げ捨てる宿儺は、思い切り俺の背中を蹴り飛ばした。
そのまま真っ逆さまに下へと落ち、水面にダイブ。
「完ペキに入ったと思ったのに」
水面から顔をあげそう呟けば、頭上から宿儺が俺目掛けて飛び降りてくる。
再び俺は水面へと沈んだ。
俺の背中に腰を据える宿儺。
体重を掛けんな、重い。
身動きも取れずに黙っている俺に宿儺はここがどこなのかを教えてくれた。
「ここはあの世ではない。俺の生得領域だ」
生得領域……。
確か夏油と伏黒がなんか言っていたような気が……。
「"心の中"といいかえてもいい。つまり、俺達は"まだ"死んでいない」
そう言って宿儺は、にやりと不敵な笑みを浮かべる。
「オマエが条件を呑めば、心臓を治し生き返らせてやる」
「偉っそうに。散々イキっといて結局テメェも死にたくねぇんだろ」
「事情が変わったのだ。近い内、面白いモノが見れるぞ」
面白いモノってなんだ。
こいつの考えてること何一つわかりゃしねえ。