第5章 特級
静かに瞳を瞑っている虎杖の胸にはぽっかりと穴が空いていて、宿儺が虎杖の心臓を取り出した場面を思い出してしまい、口を塞いだ。
「好きにバラしていいよね」
「役立てろよ」
「役立てるよ。誰に言ってんの」
ドクンドクンと、心臓が痛いほど音を立てる。
私はゆっくりと近づいて、ひんやりと冷たくなった虎杖の手を握った。
「………虎杖ぃ」
声に出してしまえば脆いほどに私の涙腺は壊れた。
ボダボダと大量の涙が虎杖の腕や手に零れ落ちる。
あんたらと五条悟だけだったんだよ。
私を「夏油傑の妹」としてではなく「夏油」として見てくれたのは。
すごく嬉しかったんだよ。
ちっぽけなことかもしれないけど。
そんなちっぽけなことで私は救われていたんだよ、知らなかっただろう。
「虎杖、ごめん……」
私が弱いばかりに、虎杖は死んだ。
あの時逃げなければ。
私がもっと強ければ。
なんで私はこんなにも弱いのだろうか。
誰かのせいにしなければ生きていけないほどに。