第5章 特級
――夏油傑side――
「わざわざ貴重な指一本使ってまで確かめる必要があったかね?宿儺の実力」
新宿の通りを歩きながら、特級呪霊の一人漏瑚が私に話しかけてきた。
頭からはぐつぐつと今にも噴火しそうだ。
「中途半端な当て馬じゃ意味ないからね。それなりに収穫はあったさ」
「フンッ。言い訳でないことを祈るぞ」
言い訳?
誰に言っているんだか。
私は静かに笑みを浮かべた。
私と特級呪霊3人は、近くのファミレスへと入る。
「いらっしゃいませ。一名様のご案内でよろしいですか?」
「はい。"一名"です」
呪いの見えない彼らの愚かなこと。
私は4人掛けのテーブルに座り軽く息を吐いた。
「つまり君達のボスは、今の人間と呪いの立場を逆転させたいと。そういうわけだね?」
「少し違う」
漏瑚はテーブルを指で軽く叩いた。
そして彼なりの意見を述べる。
「人間は嘘でできている。表に出る正の感情や行動には必ず裏がある。だが、負の感情。憎悪や殺意などは偽りのない真実だ。そこから生まれ落ちた我々呪いこそ、真に純粋な本物の"人間"なのだ。偽物は消えて然るべき」
まるで自分たちが人間であるかのように話す。
どの口が言っているんだか。
まぁ、私の目的のためにも彼等には協力してもらわなくてはいけない。
「……現状、消されるのは君達だ」
「だから貴様に聞いているのだ。我々はどうすれば呪術師に勝てる?」
その問いに私は指を二本立てた。
「戦争の前に、2つ条件を満たせば勝てるよ」