第5章 特級
宿儺に投げ飛ばされ、盛大に建物の外壁へと吹き飛ばされる。
どちらも限界に近かった。
鵺もこれ以上戦ったら破壊されてしまう。
伏黒の呪力は一体どれだけ残っているだろうか。
それにしても。
自惚れていたな。
五条悟の任務をこなしていたから。
五条悟と戦っていたから。
それなりに強いと思っていた。
手加減、してたんだもんなアイツも。
「ばかだろ、私は」
「夏油……?」
「糞が。マジで糞だ。ただ自分がかわいいだけじゃねえか」
「大丈夫か」
「お兄ちゃんの仇を取るだとか抜かしといてよ、今ここでビビッてさ。なにが準一級だよ、なにが復讐だよ。自分が死にたくねえ理由に他人を使うなって話なんだよな」
ぶつぶつと自分自身へ悪態をつく。
その間に宿儺は私たちの目の前に立っていて。
私なんて目に入っていない宿儺は伏黒と話をしている。
伏黒の式神は影を媒体にしている。
呪符を使う術式なんかよりも応用は効くし、何より伏黒は入学した時点で2級の術師だ。
天才なんだよ。
『分からんな。オマエあの時、何故逃げた』
なんの話をしているのかわからないけど、ゴチャゴチャ五月蠅い。
何もかもがうるさい。
宿儺の声も雨の雫も自分の呼吸音さえ。
『そこの小娘よりもオマエの方がよっぽど面白いな』
「………な」
『だが宝の持ち腐れだ。まぁいい。どの道その程度ではココは治さんぞ』
「……せえな」
『つまらんことに命を懸けたな。この小僧にそれ程の価値はないというのに』
「うるせえな!!さっきからよ!!!!」
ゆっくりと立ち上がって、私は掌を合わせ指を組んだ。