第1章 復讐
――夏油side――
目が覚めるとそこはよくわからない場所だった。
四方八方にお札がたくさん張り付けられている。
動こうとした身体は注連縄によって縛られていた。
「起きた?」
声のする方を見ると、目の前の椅子に五条悟が座っていた。
こんな近くにいるのに何もできないことが腹立たしい。
歯茎むき出して吠える私を相手せず、五条悟は言った。
「夏油。君の秘匿死刑が決まったよ」
「……………」
いきなり告げられた死刑宣告だったけど、私の頭は至極冷静だった。
そりゃそうだ。
五条悟を殺そうとしたのだから。
でも、死刑宣告の理由はそれだけじゃないだろう。
「私が夏油傑の妹だからか」
「わかってんじゃん」
指をぱちんと鳴らす目の前の男を本当に殺してやりたい。
「でもね、僕はこう見えてとても優しい性格をしていてね。僕を殺そうとしてたみたいだけど、見ての通り僕は傷一つつけられていない。つまり君はまだ何もしていない。何もしていない子供を死刑にするなんて、僕の良心が痛んじゃう」
「どの口が言ってんだ。兄を殺したくせに。親友だったんだろうが!!」
「そう。親友だったよ。たった一人のね。でも、仕方がない事も世の中にはある」
なんだ、それ。
仕方がないから、人を殺してもいいのか。
そんな理由でお兄ちゃんは……!!