第5章 特級
――伊地知潔高side――
五条さんの肩にもたれ規則正しい寝息を立てる夏油さんと、彼女の肩を抱いて優しい笑みを浮かべる五条さんをバックミラー越しに見つめる。
この人がこんな顔をするところを、私は初めて見た。
「……五条さんは」
「ん?」
「いえ、なんでも……」
「なんだよ、伊地知。言えよ」
口調は荒いが、隣で寝る生徒を起こさないようにその声はきわめて小さい。
そう言う気づかい、できるんですね。
だったら私にもう少しばかりそういう気遣いをしてほしいのですが。
と思うのは我儘なのだろうか。
私は軽く息を吐いて、ちらりと夏油さんを見る。
「五条さんは、夏油さんの事をどう思われているのですか」
「……それはどういう意味?」
「………私にはわかりません。あなたを殺そうとしているのにそうやって気遣い大切にしているのが」
「え、僕別に気遣ってないけど?」
無意識……?
どこからどう見ても気遣っているでしょうよ。
「でも、最近は少し楽しいよ。僕を殺そうと躍起になって急成長しているからね」
それが私には理解できない。
普通は恐れるものでは。
でもこの人は最強だからそんなことは思わないのか。