第4章 対面
「悠仁はさ、イカレてんだよね」
そう言って自分のこめかみをコン、と指で叩く五条悟。
曰く。
虎杖悠仁は異形とはいえ生き物の形をした呪いを、自分を殺そうとしてくる呪いを、一切の躊躇なく殺りに行く。
私や伏黒のように昔から呪いに触れて来たわけではない。
ただの非術師であり一般人。
普通の高校生活を送っていた人間。
いくら才能があっても、呪いによる嫌悪と恐怖に打ち勝てず、挫折していった呪術師を私たちは知らない訳じゃない。
イカレていないやつは、この世界ではやっていけない。
「成程。お前は釘崎のイカレっぷりを見たいと」
「そう」
「性格悪いな。そのことを本人に言わないなんて」
「言っても言わなくても同じでしょ」
本当に性格が悪いな、こいつ。
「釘崎は経験者ですよね。今更なんじゃないですか」
「呪いは人の心から生まれんだぞ。人口が多ければ多いほど呪いの力も強くなるだろ。ド田舎と都会じゃ、レべチだろ」
「の言う通りだよ。でもね」
五条悟は一度息を吐いた。
そして廃ビルを見上げる。
今ごろ二人は戦っているんだろう。
五条悟につられて私と伏黒もまた廃ビルを見上げた。
「レベルと言っても単純な呪力の総量の話しだけじゃない。"狡猾さ"。知恵をつけた獣は時に残酷な天秤を突き付けてくる。命の重さをかけた天秤をね」
「ハンター試験の予選みたいなもんか」
「わかりやすい例えだね」
ハンター試験の予選で「母と恋人が誘拐されてどっちを助けるか」という問題があった。
答えは「沈黙」だったが。
それはハンター試験での話で。
今目の前の試験は呪術師としての試験。
「沈黙」という答えは"ない"。