第4章 対面
淡々と話す夏油だったけど、時折悲しそうな苦しそうな顔をしていて、どれだけ苛まれてきたのか考えなくても分かった。
眉唾の感想だし、俺が思うよりずっと苦労してきたのだろうけど、ぶっちゃけ俺は呪術のことは何一つわからない。
兄が大量に人を殺したと言うのは事実なのだろうけど、夏油は何もしていない。
「夏油は夏油だろ」
これが俺の意見。
夏油の兄がどういう人なのかは知らないけど、俺からすれば……。
「何が同じなのかさっぱりわからん」
それに尽きた。
頭が悪いからこれ以上考えたらショートしそう。
頭を掻いて、悩むけどやっぱりいい答えは出てこなかった。
ちらっと、夏油を見れば少しだけその瞳は揺れていて。
え、泣いてる?と思ったけど、彼女はぐっと唇を噛んだ。
「お前が聞いてきたんだろうが」
「あ、そうだった」
「ほら、行くぞ。日が暮れる」
再び俺に背を向けて歩き出す夏油。
その時、俺は見てしまった。
背を向ける直前。
彼女は少しだけ笑っていたことに。
その顔に、俺はなんとも言えない気持ちになったというか、目に焼き付いちゃって、なんか、なんていうの。
なんかもう、やばかった。
あの後もいろんな場所を案内されたけど、正直あんまり覚えてない。
覚えてるのは一瞬見えた笑顔だけ。
ずっと脳裏に焼き付いて離れない。