第3章 受胎
家入硝子は私の手の中に、それを置いた。
卵のような球体は小さな音を立てて、殻を破る。
微かに破れた殻の中から、伸びる小さな、本当に小さな手を見て、私は静かにそれを握りつぶした。
ぐしゃり、と。
その奥で小さな、耳を澄まさないと聞こえないほどの断末魔が聴こえた。
もう手の中には卵の形も影も呪霊の姿も何もない。
私の中で、堪えていた何かが爆発した。
声にならない叫びが、涙となって零れる。
一ヶ月にも満たない時間。
呪霊だってわかっていた、祓うべき存在だとも。
だけど、どうにかできるなら、守ってあげたかった。
どうにかできる術がこの世界にあったらよかったのに。
心臓がぎゅうと、締め付けられる。
生まれてきた生命を、生きたいと願う命を。
私がこの手で殺した。
「……しかたが、ないっ」
そう言葉にするしか、できなかった。
空っぽになった腹の中は寂しさが残ったまま。