第26章 事変
そこには目を覚ました夏油が鋭い視線で俺を睨みつけていた。
「や、めろ……ッ。オマエが、領域を展開したら一般人が……」
「甘いな。ここで俺が敗れたら伏黒恵もオマエも死ぬぞ」
「……ッ、駄目だ……!!」
「なら、オマエが守ればいいだろう。俺の攻撃からな」
夏油の腕を振りほどき、俺は印を結んだ。
「領域展開"伏魔御廚子"」
俺の領域は他の者の領域とは異なり、結界で空間を分断しない。
結界を閉じず、生得領域を具現化する。
例えるなら、キャンバスを用いず空に絵を描くことに等しいか。
加えて相手に逃げ道を与えるという"縛り"により底上げされた必中効果範囲は最大半径200m。
「伏黒恵への影響を考慮し、効果範囲は140mの地上のみに絞った。オマエが人間どもを救いたいと願うならオマエ自身で証明してみせろ」
「糞がッ!!!!」
呪力も底尽きたくせに、それでも抗うとは。
何時の時代になっても人間という生き物は愚かだ。
「"施錠"!!」
鍵を四方八方へと放り投げる夏油。
「"解放"!!」
俺の領域から人間を守ろうと使った術式。
それは簡易領域に似た術式だった。
通常の簡易領域は領域展開から自身を守るためのものだが、こいつの"解放"は、"自分以外の人間を守るもの"……いや、応用してこれか。
"解放"は元々、術式を無効にする、というより文字通り術式の制限を解き放ち、術式または閉じられた空間から解放するための術式。
それをこいつは応用しているだけだ。