第26章 事変
軽くため息を吐き、意識を手放し地面に倒れゆく夏油を抱きとめた。
式神との距離を取り俺は夏油にも治療を施した。
貫かれた胸と喉の傷が癒えたが息をしていない。
……血塊が詰まっているのか。
「世話の焼ける奴だ」
ぐっと夏油の身体を引き寄せ、血に濡れた唇を俺の口で塞いだ。
口内に溜まった夏油の血だまりを吸い上げる。
広がる鉄の味、微かな塩辛さが俺の舌を刺激した。
いくらから吸い上げ地面に吐き捨てる。
べちゃ、と音を立てて夏油の血と俺の唾液が混ざったそれが地面を汚す。
再び唇を寄せ、今度は舌を口の中へ差し込んだ。
喉奥にこびりついている血塊が夏油の呼吸を邪魔している。
ズズ、と吸い上げれば夏油の喉に絡まっていた血塊が少しずつ引っ張り出されていく。
舌も使い何度も何度も吸い上げる。
漸く塊が俺の舌先に触れた。
そのまま己の口内に招くように巻き取れば、ちゅるんと簡単に俺の口内へと入ってきた。
舌の上でレバーのような塊がコロコロと転がる。
俺はそのままその塊を味わい、喉の奥へと誘い飲み込んだ。
悪くない味だ。
2、3度同じことをしてやれば、夏油から小さな声が漏れだし始めた。
「……っ」
微かではあるが息をしているのが分かる。
暫くすれば目を覚ますだろう。
最期に柔らかい唇に俺の唇を寄せ、舌で舐めとった。
ただの嫌がらせだ。
小僧に対して。
「ケヒッ、愉快だ」
そう言って俺は口の中に溜まった唾を吐き捨て、式神へと向き直る。
伏黒恵を生かすために、夏油を利用するために。
異分子の俺がこの式神を倒し、調伏の儀を無かったことにする。