第26章 事変
「近寄るスキ、見せないようにしてるけどさ。俺が何もしなくてもそのうち男の子死ぬでしょ」
「ほざけ。テメェとは日頃の鍛え方がちがうんだ、よ……」
そう言った時、私の後ろで伏黒が地面に倒れる音がした。
「伏黒!!」
「調伏はな、複数人でもできるんだ」
伏黒は、力の入らない腕で体を起こそうとしている。
私は急いで伏黒の元へと駆け寄った。
攻撃されてもおかしくはなかったが、細身野郎は何もしてこなかったところをみると、こいつもこいつでタイミングを図っているんだ。
私達2人をまとめて殺せる瞬間を。
伏黒の腕を取り肩を貸してやり立ち上がる。
その間も伏黒は術式の事を話していた。
複数人での調伏は無効になること。
それは術者本人にとっては意味のない儀式のこと。
意味はなくなるが、ないなりに使い方があること。
コイツがこんなに饒舌に術式の話をすると言うことに嫌な予感を覚えた。
以前、悟が言っていたな。
禪院家と五条家は仲が悪く、そのきっかけとなったのはいつだったっけ。
江戸時代とかそこらへんの時代に、当時の当主同士が御膳試合をして両方死んだと。
その時の当主は六眼持ちの無下限呪術使いと十種影法術の使い手。
「つまり、恵にはそれくらいの力があるんだよ」
「……死に急いでいたらそれこそ意味もねえだろ」
なんて会話をしたっけ。
伏黒には悟と同等の力がある。
相手を殺せるほどの力が。
少し羨ましくなったから、この時の会話は頭の中にずっと残っている。