第26章 事変
「"手当て"の由来、知ってるか?」
「え、知らないけど」
「病気や怪我をした際、患部に手を当てて治療したことが語源となっているらしい」
「へぇ……」
「他にも心を癒したり絆を深めたりする力もあるとかなんとか」
「……で、それが今のと何か関係あんの?」
「オマエは頭がいいんじゃなかったのか。いい機会だ、考えてみろ」
そう言って家入硝子はガーゼを私の耳に宛がい、テープで固定した。
「死ぬんじゃないぞ、夏油」
「死なねえよ。悟とアイツを殺すまではな」
テントを後にしようとした私の背中に、家入硝子が声を掛けた。
私は振り向くことはせずにそれだけ言ってテントを後にした。
伏黒の後を追って私も地下へと急ぐ。
治療している間少しだけ休むことができた。
ここからだと、マークシティから連絡通路使って渋谷駅に向かえばすぐだ。
こういう時伏黒の鵺がいたらめちゃくちゃ楽なんだろうな、と余計な事を考えながらひたすら走った。
漸く連絡通路が見えてきた。
ずっと走っていたから息は乱れている。
が、目指すべきところが見えたおかげで立て直す事が出来た。
その時、連絡通路の窓を割って真っ黒い何かが地面に落ちてきた。
「伏黒!?」
名前を呼んでもこっちを見向きもしない。
その表情は混乱しているのか動揺しているのか、大きく目が見開かれ瞳は揺れていた。
私は伏黒の視線の先に目をやり、息を呑んだ。
私の目に写るは、先ほど猪野をダウンさせ私の耳を吹き飛ばした男が立っていたのだ。
あの時感じた恐怖が再び襲ってくるが、もう引くわけにはいかない。
想像しろ。
アイツに勝つイメージを。