第26章 事変
「よくそれで喋れるなって思った」
「ぶっちゃけ今すげえ痛い。アドレナリン出てたんだな」
今になってズキズキと痛む左半分。
そうか、肉抉れてるんか。
しかも左耳が原型留めてないって……。
左手で左耳を触ろうとしたが、確かにそこにあるはずの耳が無かった。
あの時聞いたデカい音は耳が潰れる音だったんだ。
なんでよりによって左耳……。
そこには悟から貰ったピアスが付いてたのに。
誕生日プレゼントで、悟が私のために……。
「夏油、平気か?」
「平気。ちょっとショックなだけ」
「……そうか」
「虎杖ぃ……」
「なに?」
「……オマエ、死んだら覚えてろよ。末代まで呪うからな」
小さく零した言葉。
虎杖は「じゃあ、死ぬワケにはいかねえな」っていつもと変わらない明るい声で答えてくれて、少し嬉しかった。
「「"後でな"」」
「応!!」
虎杖と別れて、私と伏黒は猪野を連れて家入硝子の元へと向かった。
少し聞き取りづらくなった左耳。
寂しくなった音の世界。
だけど、落ち込んでなんていられないから、私は無理やり前を向いて走り出した。