第26章 事変
なんで殺したいほど憎んでいる男と付き合っているかだと?
なんで殺したいほど憎んでいる男を好きになったのかだと?
オマエら呪霊にはわかんねえだろうな。
人間の"負"の感情から生まれたオマエらなんかには一生理解できない感情だ。
「歪んだ呪い、クレイジーラブってやつだよ。覚えとけ」
と、同時に。
偽物が持っていた悟を封印した箱がカタカタと震えだし、地面に亀裂をいれて地面に落ちた。
それに気を取られている隙に、私はこの場から走り去った。
悟、ごめん。
少しの間だけその中にいて。
必ず封印を解くから。
だから、今はさよならだ。
とりあえずここから出なければ。
地下のホームから出るために階段を駆け上がる。
その時、私は誰かに名前を呼ばれたような気がした。
だけど私は何も反応しなかった。
あまりにも小さな声だったし、なにより立ち止まって確認する時間などなかったから。
早く、早く、早く。
気持ばかりが急いてしまい、何度も何度も足がもつれてしまう。
電波が絶たれているせいで、誰にも連絡がつかない。
誰でもよかった。
誰でもいいから、早く会いたかった。
悟が封印されたことを伝えないと……。
「……⁉」
思わず足を止めた。
どこからか声が聞こえる。
これは……虎杖の声?
微かだけど、七海を呼んでる?
私の足は、声のする方へと向かっていた。
地上へ出ない事には何も分からない。
押し寄せる人の波をかき分け、溢れる呪霊や形を変えられた改造人間を祓って、虎杖の声のする方へとただただ無心に走った。