第17章 対峙
太鼓が轟いたような大声がし、同時に地面がわずかに揺れた。焦るまえよんたちだったが、すっと背筋を伸ばしたウパちゃんの背中だけはブレていない。
「バグ様、聞いて下さい!」ウパちゃんは何も見えない暗闇に向かって叫んだ。「アツクラを壊すのはやめて下さい! ここには沢山の思い出があるんです!」
ウパちゃんの声がよく響いた。
ギョロリと、暗闇から大きな黄色い目が一つ開いてまえよんたちは騒ぎ出した。
「え、なになに!?」
「なんだよコイツ!」
「デカイ目……」
「よく見るボスか……?」
ヒカック、ぎぞく、ぽんPに続いて思わず例のモンスターの名前を口にしかけたコハロンだったが、今はふざけている場合ではなさそうだ。
「ウパよ、早くソイツらを処分するのだ」
大太鼓声で一つ目のバグとやらが喋る。どういうことか分からずにヒカックたちを見やるコハロンだったが、彼らも状況がよく分かっていないみたいだ。
ウパちゃんへ視線を戻すと、首を振ってる彼女の姿が映った。
「ううん。コハロンもヒカックも、みんないい人間だから処分しない」
「戯け者が!」バグが大声で話し続ける。「なぜ俺様がお前を人間にしてやったと思っている! この世にいる人間たちを根絶やしにするためだぞ!」
「してやったって……」
コハロンは思わず反論しかけてぽんPに肘を小突かれる。今口を出すタイミングじゃないだろうが、ウパちゃんと過ごした時間を、今そこに立っている彼女を、コハロンは信じたかったのだ。