第16章 影
「おいバカ、何してんの! 落ちたら危ないよ!」
「ぎぞくさん、手伝うよ!」
ウパちゃんを掴んだ勢いで縁から身を乗り出したぎぞくの背中をヒカックが掴む。次にはぽんPもぎぞくを掴み、コハロンを振り向いた。
「アナタも手伝って!」
「あ、ああ、手伝う!」
コハロンも慌ててぎぞくの背中を掴んで引っ張ろうとした。
「なんで? なんでみんな止めるの?!」
そう言いながらどうやらウパちゃんは暴れたらしい。ぎぞくの体がグラグラし出し、コハロンたちはより手に力を込めた。
「そりゃ止めるでしょ! 女の子一人そのよく分かんないところに行かせないって!」
暴れないで、とぎぞくが言い終わらない内に、ウパちゃんは大人しくなった。そしてぽつんと、こう聞いてきたのだ。
「え、ウチと一緒に来てくれる……?」
「えっ」
「ぎぞくさん、もう限界かも!」
驚く間もなく、ヒカックが声をあげた。ウパちゃんが暴れたことでぎぞくの体はもう半分以上建物の外側へずり落ちていて、引っ張りあげるのが困難になっていた。コハロンたちもなんとか引っ張ろうとするが、なかなか引き上げられない。
「あ、ウパちゃんの足が!」
とぽんPが声をあげてよく見てみると、建築物を飲み込んでいる影がウパちゃんの片足に絡みついていた。思わずゾッとしてしまった。アレは一体なんだというのか。飲み込まれてしまったら、自分たちはどうなってしまうのか。
「どうせなら一緒に行こう!」そう言ったのはヒカックだった。「アツクラがなくなるのは嫌だし、みんなでバグサマってのを止めに行こう!」
なぜかここでも明るい声のヒカックは、こういう時にこそ、勇気の力になるみたいで。
「よし、行こう!」
コハロンは覚悟を決めた。いつだってそうしてきた。まえよんが結成した時に。いや、その前から、きっと。
「じゃあ手離すよ!」
ぽんPも大きな声を出した。まえよんの返事は、変わらなかった。
「オッケー!」
そしてウパちゃんとまえよんたちは、得体も知れない影の中へ、落ちて行った……。