第15章 はじまりはおわり
「コハロン?」
「あ、いや……」
コハロンは無理矢理ウパちゃんから視線を逸らした。自分といくつ離れてるかも分からない少女に何を思ったのか、とコハロンの思考が追いつく前に、視界の端でぬるりと影が動いた。
「え」
と声を出すより早く、影はウパちゃんを飲み込もうとしていた。危ないっ、と言えたかどうか。次にはウパちゃんの悲鳴。
「きゃあ!!??」
「ウパちゃん!」
咄嗟に伸びた手。ウパちゃんもすぐにコハロンの手を掴んだ。だが謎の影は、ものすごく強い力でウパちゃんを引きずり込もうとする。コハロンは足に力を込めた。
「嫌だ……ウチ、このまま壊れたくないよ……!」
ウパちゃんが半泣きになりそうな声でコハロンの腕に縋った。俺だってここでお別れは嫌だ。コハロンはもう片方の手で手身近の柵を掴み、ウパちゃんを引っ張り続けた。
しばらくして、すぽんという音もなくウパちゃんを影から引き抜いた。勢い余ってコハロンは後ろに倒れ、ウパちゃんが馬乗りになった。
「ありがとう、コハロン……」
そう感謝を言いつつも顔はずっと申し訳なさそうだ。
「気にしないで大丈夫よ。でもさっきのは……」だが、ゆっくりと話している場合ではなさそうだ。「わ、またあの黒いやつだ!」
「え」
「コハロンさん、こっち!」
ウパちゃんの背後から忍び寄っていた影に、コハロンはなんとか庇おうとした時、ヒカックが飛び出してきて二人を高台へ連れ出した。
「何かおかしいことになってっぞ! 早くこっちだ!」
とぎぞくの声も聞こえ、皆すぐそこにいるということが分かった。結局、みんなウパちゃんの後を追ってきたってことだ。
そうして、近くに丁度よくあったぽんPの屋根の上の建造物まで登り切ってコハロンは周りに起きているおかしなことを目の当たりにすることとなる。
「え、何あれ……どういうこと?」
ウパちゃんを飲み込もうとしていた影はアレだけではなかったのだ。影は四方八方に散らばっていて、辺りの建築物も地形も、そして空までもが、まるでブラックホールのように飲み込んで破壊し尽くしていたのだ──。