第10章 名前
「コハロ〜ン、見て見て!」
まえよん拠点に戻って来たまえよんたちは、水浸しのコハロン家にウーパールーパーを放った。するとウパちゃんも飛び込んで楽しそうに泳ぎ出してはコハロンに手を振る。
「いいなぁ、僕にも手を振って欲しい〜」
とヒカックが駄々を捏ねたのがウパちゃんにも聞こえたみたいで、ぴょんっと水から出てきて顔を覗き込んだ。
「ウチに手振って欲しいの?」
「うん。振って欲しい」
ウパちゃんの質問にヒカックが包み隠さず答えると、彼女はケラケラと笑った。
「いいよ! こんな感じ?」
ウパちゃんは大きく両手を振った。ヒカックはとても嬉しそうに笑って手を振り返した。だが、次のウパちゃんの言葉でまたヒカックの胸を突き刺すこととなる。
「えーっと、名前なんていうんだっけ?」
「え……ずっと僕の名前分からないまま手振ってくれてたの?」
「うん」
「僕はヒカック。よろしくね、ウパちゃん」
「ヒカック? よろしくね!」
ヒカックは平静を装っていたが明らかに動揺していた。それを隠すようにヒカックがコハロンの肘を小突いたので、なんだよ? とまた口論になりかける。
「ねぇねぇ! 他にも面白いものあるの?」そこにウパちゃんの明るい声が飛び込んだ。「他にも色々見てみたい! ウチ、アツクラのこともっと知りたいな!」
「俺はいいけど、みんなはどう?」
コハロンはヒカックから他の二人へ視線を投げた。ぎぞくは、すぐにいいねと答えたが、ぽんPからはグサリとした言葉が返ってきた。
「ウパちゃんをアナタに任せて置けないでしょ。どうせすぐ迷子になるんだし」
まぁ、そうかもしれないけど。てかそうなんだけど。コハロンはすぐには認めたくなくて、はいはいと適当な言葉で流した。