第12章 12
五条君の声のトーンが一段下がる。
そう言えば夏油君は日本に僅かしかいない特級術師とやらの一人だ。
その特級術師の呪力や術式が私にベッタリ貼りついているとうのは気持ちが悪い。
呪いを掛けられた気分になる。
初めて呪術師としての彼を不気味で怖いと感じた。
「私…夏油君に呪われたの?」
「とりあえず祓ってやる
ただ、その指輪を着けてる限り傑の“歪んだ呪い”から逃れる事は不可能だ」
質問に関する回答は無かった。
“祓う”という事はやはり何らかの憑き物があるのだろうか…
このエピソードをオカルトチャンネルに投稿したら紹介されるかな。
なんてぼんやりと思ってしまった。
「指輪…」
五条君が面倒臭そうな表情と声色で私の右手に視線を送る。
夏油君は違う指に着けて欲しかったらしいが真意を確認できないまま決別してしまった。
「何処で手に入れた?」
「高校の時に夏油君から貰ったの」
「はぁっ…
あのな…男が女にアクセサリー贈る意味分かってる?」
「そんなの夏油君に聞いてよ」
さっきから夏油君の事ばかりで涙が出そうになる。
少し前に食らったダメージに追い討ちをかけられている気分だ。
五条君は夏油君の事を話していて辛くないのだろうか…
「独占欲と支配欲の象徴」
「は?」
「“俺の女(もの)”って意味なんだよ
結婚前に父親からアクセサリーをプレゼントされても着けるなって言うだろ?」
「そうなの?」
「父親の所有物になっちまうから結婚出来なくなるんだよ
ある種の呪縛だな…」
「へぇ~そうなの…」
知らんかった。
五条君は謎な迄に恋愛や男女関係の豆知識が豊富だったりする。
そこまで入れ込むような恋愛をしてるイメージが全く無いだけに毎回関心してしまう。
“指輪ずっと着けてくれてるんだね、嬉しいよ”
突然、夏油君の声が脳裏に蘇った。
この指輪は夏油君にとって私が彼の所有物であるという目印なのだろうか…
それなら今の私達には“あってはならない”物だ。
「“俺”の知ったこっちゃねーけど
それより腹減ったから、そこのファミレスで晩飯食おうぜ
指輪の事も説明してやるよ」
気が付けば冬の短い日は暮れかけている。
五条君は相変わらずマイペースだ。